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エンプティ・チェア(空の椅子)の技法Ⅰ

「エンプティ・チェアの技法」は、心理療法の世界では、ゲシュタルト療法といえば、すぐに、エンプティ・チェアの技法が、想起されるほどに、ゲシュタルト療法のイメージとなっているものです。

 

また、現在では、

カウンセリングやソーシャルワーク、

コーチングなどでも、

広く取り入れられたりもしています。

 

エンプティ・チェアの技法は、

その原理を深く理解することで、

私たちの想定を、

はるかに超えた領域まで、

応用的に使っていくことが

できるものになります。

 

ところで、
エンプティ・チェアの技法は、

セッションの中の、

さまざまな場面において、
利用でき、

効果を発揮するものとなっています。

一番、多く使用される方法は、
誰か実在の人物を、
エンプティ・チェアに置いてみて、
(そこに居ると仮定して)
その人物に、語りかけ、
伝いたいことを伝えるというものです。
また、相手になってみて、
その気持ちを探ってみるという、

形のものです。
では、この手法の、

原理的な意味を少し見ていきましょう。

 


①原理

さて、心理学、

特にフロイトの精神分析では、

「投影 projection」といえば、

自分が心理的に抑圧したもの

=自分のものと認めたくないものを、

相手(外部の世界)に投げ込む、
防衛機制を指しています。

 

「あの人はなんかすごく嫌な人」

「あの人はすごく悪い人」

という場合、

私たちの内にある、

受け入れたくない要素、

認めたくない要素(自分の感情)を、

相手に投影しているわけです。

 

「あんな邪悪な感情を持っているのは、あの人だ!」

「自分は、あんな邪悪な感情はまったく持っていない!」

となっているわけです。

そのことで、

自分のセルフ・イメージが守られるわけです。

 

しかし、そのようにニセの

制限的な自己像を持つことで、

さまざまな対人関係の苦痛や

生きづらさも

生まれてしまっているわけです。

 

ところで、

そこまで限定しなくとも、

私たちが、一般に、

他人や外部の世界をとらえようする時は、

無意識的に、

自分の心的内容(欲求)を、
外部の世界に投影して、

物事を把握しようとしているものです。

 

「画家は、

その身体を世界に貸すことによって、

世界を絵に変える」

といったのは、

フランスの哲学者メルロ=ポンティです。

(『眼と精神』木田元他訳、みすず書房)

 

私たちは、

潜在意識も含めた、

心身の全存在で、

世界や他人に関わっているのです。

 

私たちが、

ニュートラル(中立的)に、

客観的に、

外部世界をとらえることなど、

基本的には無いのです。

 

他人や外部世界が、

ニュートラル(中立的)に、

客観的に、

とらえられるようになるのは、

自分の心的投影の歪みが、

ある程度、

解決された後での話です。

 

さて、

エンプティ・チェアの技法は、
この投影の原理を、

応用したものになっています。

 

また、

心理的投影の歪みを、

取り去るための技法と、

なっています。

 

 

②技法と手順

エンプティ・チェア(空の椅子)の技法は、
クライアントの方と、
セッションを進めるなかで、
クライアントの方にとって、
「或る人物との関係性」が、
重要なテーマであると、

感じられた時、
また、
強い感情的な価値(付加)を有していると、
判断された場合に、
まずは、提案される技法のひとつです。

(1)まず、
クライアントの方に、
空いている椅子や座布団の上に、
その人が居ると仮定してもらいます。

(2)次に、
その人に、言いたい事を伝えてもらいます。

さて、
簡単に書きましたが、
「架空の劇」にもかかわらず、
このようなこと自体が、
クライアントの方にとって、
心の負担となる場合もあるので、
慎重なやり取りや、
場の設定が必要なのです。

というのも、この原理は、
上の図のようになっているからです。

 

つまり、
椅子に置く、「その人物」とは、
実は、クライアントの方の中に、

存在している、
心的内容(欲求・自我状態)、
そのものだからです。

仮に「人物A」を置いた場合、
そこに、クライアントの方が見ているのは、
人物Aに投影している、
自分の心的欲求A(自我状態A)そのものなのです。
(本人は、それに気づかず、

そこに、人物A本人を、

見ていると思っていますが)

そして、この場合、

そこに見た、
人物A=心的欲求Aとの

「関係性(非対称性)」において、
今度は、自分をただちに、
心的欲求C(自我状態C)と同一化します。

自分が、

「自我状態C」という存在に、

なってしまうのです。


ポイントは、ここです。

心的欲求(自我状態)AとCとの

関係性(=カップリング・非対称性)

のなかで、
自己のアイデンティティが、
規定(拘束)されてしまっているのです。

これが、
普段の日常の、

人間関係のなかでも、
私たちが、
不自由になってしまう理由です。


私たちは、そこにいる、

実在の他人に、

拘束されているのではなく、
その人に投影している、
自分自身の心的欲求や自我状態の、

構造(非対称性)に、
拘束されているのです。

 

(有名な、
トップドッグ(超自我)と

アンダードッグ(下位自我)の

カップリング、
世間に多い、

加害者と被害者のカップリングも、
心の非対称的な構造として、
クライアントの方の心の中に、
元々、存在しているものなのです)

そのため、
潜在意識の中にある、
この心的欲求(自我)AとCとの関係性を、
十分に意識化することや、
その硬化した非対称的な構造(葛藤・緊張)を、
変化(弛緩・流動化)させることが、

まずは必要なのです。

そのためには、
この非対称的な拘束のなかで、
緊張している感情を、
解放していくことが、

必要となるのです。

 

そうしなければ、

十分な自由や、
気づき awarenessの水準を、
得ることもできないのです。

しかし、

それは簡単なことなのです。


やり方(技法)としては、

今同一化している自我状態の、

情動や感情を、

表出しきるということなのです。

放出するということなのです。

 

たとえば、

今同一化している自我状態Cになった場合は、
そこで体験している、

感情体験を、

メッセージとして、
十分に、余すところなく、
人物(自我状態)Aに向けて表出し、表現し、

伝えることなのです。

 

希望、願望、恐れ、不安等々も含め、

あらゆる感情を、

表現しきることなのです。

 

それが、

自我状態Cの十全な存在表現となり、
十全な存在状態を導くのです。

そのことで、

過度な緊張状態が弛緩し、

拘束が少し外れだすのです。

 

重要なのは、

「十分に伝えきる」ということです。

それは、欲求不満な言えない気持ちを、

完了させるということです。

 

もしも、
ここで、 「自我C」に充分、
同一化できて(なりきれて)いなく、
そのCがはらむ情動が

十分に表現されない場合は、
「自我C」は、
「自我C」ではなく、
「自我C(-A)」のように、
「Aの存在に毀損されたC」という、

中途半端の存在に、
とどまってしまうのです。

 

これだと、

「自我C」の十全な存在状態に、

ならないのです。


そうなると、
非対称的な拘束を脱するのに、
不足(毀損)が生じてしまうのです。
ここには、
注意深い観察とアプローチが必要となるのです。

 

 

(3)役割交替

さて、次に、
クライアントの方に、
Cから、Aの椅子(位置)に、
移動してもらいます。

すると、
クライアントの方は、直ちに、
心的内容(自我)Aに同一化します。

この原理は、催眠で言うところの
アンカリング(知覚情報と自我状態の結びつき)です。

 

先ほどのCの役の時に、
Aの椅子に、

心的欲求(自我) Aを投影していたので、
Aの椅子に、座った時に、
直ちに、Aに同一化するのです。
 
逆に言うと、Cの時に、
Aの椅子に、心的欲求(自我) Aを、
クライアントの方が、
十分に投影できているかが、

重要なポイントです。
この投影が十分になされていないと、
椅子を代わったところで、
十分にAに同一化することができないからです。

そして、
この同一化を通して、
クライアントの方は、
それぞれの自我の欲求や情報を、
深いレベルで感じ取ることができるのです。

そのため、
ファシリテーターは、
クライアントの方が、
それぞれの役の時に、
十分に(混じり気なく)、
その心的欲求(自我)に、
同一化できているかを、
きちんと、確認しなければなりません。
もし、そうでない場合は、
別の心的内容(自我)が、
そこに存在している可能性もあるので、
場合により、
「別のアプローチ(そのⅡ) 葛藤解決」を、
導入検討しないといけないかもしれません。

 


(4)役割交替の繰り返し

さて、そして、
この役割の交替を、何度か繰り返します。

すると、
同じ存在である意識(気づき)が、
両方の自我状態に、

同一化していくことで、
分断していた、

非対称的なAとCの間に、
情報の流通(横断)が、

つくりだされます。

情報が流れ出し、交流しはじめ、
対称性が生まれだすことになるのです。

(ここでは、

気づきのメタ(上位)的な位置が、

情報の経路として、

効果を発揮するのです)

役割交替を、
何回も繰り返す必要性は、

各自我状態の中にひそんでいる、

感情・意識・認識・信念の一体化は

長年に渡り固定化しているので、

それを溶かすには、

エネルギー(感情)をさまざまに、

流す必要があるからです。

 

 

心的欲求の非対称的構造は、
揺り動かすような動きを与えないと、

深い部分のエネルギーが、

自由に流れ出さないからです。

 

各自我状態の、

深いところに存在している、

真のメッセージに

気づき(意識)を行き届かすことが、
できないからです。

役割交替を繰り返すことで、

クライアントの方も、

各自我状態にも慣れてきて、

各自我それ自身(単体)の内実に、

新しい気づきをもって、

同一化をすることが、
できるようになるのです。

そして、
クライアントの方自身が、
心的欲求AとCを、十分に切り分け、
それぞれの自我(欲求)状態に、

同一化・体験できた後にはじめて、
クライアントの方は、
自分が、いままで、
外部世界や相手に投影していた、
心的欲求AとCの真の姿に、

まざまざと、
気づくことができるのです。

クライアントの方が、
実在するAさんに投影していた、
心的欲求Aの姿を、
自分でも、
アーハ体験のように気づき、
驚くことになるのです。
そこで、

幻想や霧が晴れたように、
すっきりした了解感を得ます。
そして同時に、
実在するAさんに投影していた、
自我(欲求)状態A自体が、
自分自身の自我状態、

パワーであったことに気づくのです。

そして、
そのパワーを、

自分の物とすることができるです。

 


さて、以上が、
エンプティ・チェア(空の椅子)の技法の、
あらましとなります

この技法は、

さまざまな活用場面を持っており、
また、その効果も多様なものです。
そのため、

ゲシュタルト療法を超えて、
色々な流派でも、

採用されることになったのです。

 

しかし、

この技法のもつ潜在能力は、

それだけに終わるものではないのです。

 

私たちが、

何万年にも渡って実践してきた、

シャーマニズム的伝統の秘密も、

この技法や、それが生み出す、

変性意識状態(ASC)の中に、

含まれていたりもしているのです。

 

そのため、

この技法の奥深い意味合いに、

気づけていくと、

私たちは、

 

人生を変える重要な技法(魔法)を、

手に入れることにもなるのです。

 

 

 

※実際のセッション(ワーク)は↓

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セッションで得られる効果と成果

 

※関連記事

エンプティ・チェアの技法Ⅱ

葛藤解決の方法(ポイント)

葛藤解決 ネガティブな感情の扱い方

 

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