彼方まで聴くということ

 

今回は、
「聴く」とか「傾聴する」ということについて、
少し触れてみたいと思います。

 

というのも、
私たちは、
相手の話を「本当に聴く」ことができれば、
それだけで、相手の人に、
大きな変容のきっかけを持ってもらうことが、
できるからなのです。

 

ここに一冊の本があります。

 

『傾聴のコツ』金田諦應著(三笠文庫)、
です。

 

著者は、曹洞宗の住職であり、
東日本大震災後に、
移動式カフェ「カフェ・デ・モンク」をボランティアで運営し、
被災地で、二万人以上の人々の話を、
聞いてきました。

 

そのきっかけとなった
震災直後の過酷な体験を、
著者は次のように語っています。

 

「私たち宗教者は、被災地を歩き、
目の前に広がるがれきの山から立ちのぼってくる
ヘドロと遺体の臭いを嗅ぎながら、
お経をあげました。
声が震えてお経が読めなくなりました。」

 

「海岸を目指して歩きはじめて二時間後、
南三陸町戸倉の海岸に立ったとき、
私は、宗教者としてのフレーム(枠組み)が
壊れてしまったと感じました。
いままで学んできた教義や、
宗教的な美しい言語はどこかに行ってしまいました。」

 

このような体験の中から、
被災地の人々の話を虚心で聴いていこうという
著者の活動は始まったようです。

 

そこにおいて聴くことは、
もはや深く実存的な行為となります。

 

Doingではなく、
Beingが問われているからです。

 

自分のBeingをもって、
相手のBeingを聴きとることができた時、
相手の人のBeingの中で、
何か変容が起きるからです。

 

そして、それは、
ただ深く聴くことを通して、
起こっていくことであるからです。

 

この本は、
そのような
「存在自身を聴きとること」
にまつわる、さまざまなヒントを、
与えてくれるものとなっているのです。

 

そして、
私たちに、
彼方まで聴くことによる、
限りない可能性を、
示唆してくれてもいるのです。

 

 

 

 

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