ゲシュタルトの形成と破壊のサイクル

ゲシュタルト療法は、

フリッツ・パールズらにより、

精神分析や、

ゲシュタルト心理学を、

もとに、創られました。

 

ゲシュタルト療法では、

「人間」というものの

とらえ方において、

「生体としての全体性」に、

注目します。

その活動は、

全体として一貫した意味を持っている

ということです。

 

「ゲシュタルト」とは、

ドイツ語で、「形態」を意味し、

それは、

分割できない、

「固有のひとまとまりの形」を、

指しています。

 

友人の「顔」を、

思い出してみて下さい。

それは、

「全体としての固有の形」です。

目や耳の、

部分の寄せ集め(単なる集合)ではなく、

「ひとまとまりの固有の形」として、

顔は認知されています。

部分の積み上げではない、

ユニークな何かです。

それが、

「ゲシュタルト」です。
 

ところで、

生物は、

(下に見るように)

このゲシュタルトの単位で、

欲求の志向性を持ちます。

ゲシュタルトの単位で、

その欲求の完結を目指すのです。

 

さて、

ゲシュタルト療法では、

人間がもつ、

このような、

「ゲシュタルト」としての、

統合を目指す欲求の志向性、

体験の完結性を、重視します。

 

上に、

サイクルの図表をあげました。

これは、

「ゲシュタルトの形成と破壊のサイクル」

として、

ゲシュタルト療法の世界では、

知られているものです。

 

この図は、

生体に、

生じた欲求と、

それを充たすための、

一連の行動を、

循環(サイクル)として表現したものです。

 

このサイクルの意味は、

肉食動物の捕食行動を

イメージすると分かりやすいでしょう。

 

(1) 感覚・情報

→何か気配を感じる段階です。

はっきりは分からないけれど、

感覚的に、微細な情報を、

無意識のうちにとらえています。

 

(2) 気づき・図になる

→獲物を発見する。

 それと気づく段階です。

ゲシュタルト心理学では、

知覚の認知構造に、

「図と地 figure and ground」の、

1つの組み(セット)を考えます。

「図」は前景、「地」は背景です。

このセットにより、

ゲシュタルトが形成されます。

漠然とした、ぼんやりした情報(背景)の中から、

「対象=図」をとらえる段階です。

 動物は、

 感覚の気配の中から、

 感じていたものが、

  「獲物」であることを、

 明確に〈気づき〉ます。

 図(獲物)への欲求が、

 明確になります。

  この段階が、

 「ゲシュタルト」の形成です。 

 

※下に、有名な「ルービンの杯」の図があります。

 この図が、意味しているのは、

 私たちが、気づき、

 選択する「図と地」の関係です。 

 私たちが、真ん中の杯を、「図」にすると、

 両脇の人の顔は、背景(地)となり、見えなくなります。

 一方、両脇の人の顔を、「図」にすると、

 真ん中の杯は、背景(地)となり、見えなくなります。

 通常、生体は、

 欲求の緊急性に従って、

 知覚の自動的な選択によって、

 世界から、このゲシュタルトを構成しているのです。

 

(3)興奮 

→動化とも訳されます。

動物は、獲物をそれと認知して、

捕食への、内的な衝動に貫かれます。

興奮が生じ、

内的な神経的な情報が配備され、

血流がはやまり、

行動へつながる動きが、

準備されていきます。

 

(4)行動

→実際に、獲物に静かに近づきはじめます。

 

(5)接触

→獲物に、実際に攻撃することで、

 接触(コンタクトcontact)が生じます。

 

 (6)満足・充足

→獲物を捕らえたこと、

 食すること(充分にコンタクトすること)で、

 欲求が満たされます。

 充足します。

 目的を達成し、役目が終わった、

 「ゲシュタルト(図)」は、解消(破壊)されます。

 

(7)引きこもり

→捕食に満足した動物は、

 静かに引きこもります。

 元のニュートラルな状態に戻ります。

 待機の状態になります。

 次のサイクルを待ちます。

 

(3)で形成されたゲシュタルトが、

(6)の欲求の満足により、解消(破壊)されるため、

この図が、

「ゲシュタルトの形成と破壊のサイクル」

と呼ばれるのです。

 

さて、ここでは、

外部世界への捕食行動を、例に取りましたが、

環境の中で生きる生物や、

人間は、

このようにして、

欲求の、外部への働きかけと、

引きこもりの間を、

サイクルとして、回っています。

その過程で、

ゲシュタルトの形成と破壊のサイクルを、

回しているのです。

 

そして、ゲシュタルト療法では、

このような、欲求とその充足を、

「図」の形成と、欲求充足の完了として

「ゲシュタルトの完了complete」という

概念として、

とても重視しているのです。

 

 

未完了のゲシュタルト(未完了の体験)

 

さて、上記の、

ゲシュタルト形成と破壊のサイクルですが、

いつもいつも、欲しかったものが手に入ったり、

欲求を、充足できるとはかぎりません。

ゲシュタルトへの欲求が、

完了するとはかぎりません。

 

ゲシュタルト療法では、

このような、

ゲシュタルトへの欲求が完了していない体験を、

「未完了incompleteの体験」と呼びます。

また、

完了していないゲシュタルトという意味で、

「未完了のゲシュタルト」と呼びます。

 

上記の動物の捕食行動も、

獲物、特定されたゲシュタルトが、 

「得られなかった」とすると、

(失敗したり、妨害されたりで)、

生体は、「欲求不満」に陥ります。

その獲物のゲシュタルトや体験は、

「未完了のゲシュタルト」と

なります。

 

未完了の体験や、未完了のゲシュタルトは、

当然、経験内容から、

軽度から重度までの幅を

持ちます。

 

ところで、

ゲシュタルト療法では、

人生の経験の中で、

内的な欲求(衝動)が、

充足・完了されずに終わる、

「とりわけ強度な」

未完了の体験があると

それこそが、

トラウマ的となると考えました。

 

そして、

それが、人を苦しめ、

人生の十全な体験をするのを、

妨げるものだと、考えました。

また、神経症的症状を、

現すようになると考えました。

(→やり残した仕事」参照)

 

そして、

セッション(ワーク)の中では、

まず第一に、

クライアントの方の中に生き続けている、

「未完了の体験」

「未完了のゲシュタルト」を、

完了(充足)させ、

解消させていくことを狙いとします。

 

そのことを通して、

クライアントの方は、

自己の葛藤に、

煩わされる(妨げられる)ことなく、

より十全に、

人生経験を感じとり、

行なっていくことが、

できるようになると考えるのです。

 

 

 

気づきの3つの領域

 

【PART1 Basic】ゲシュタルト療法

ゲシュタルト療法【基礎編】

ゲシュタルト療法【実践・技法編】

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