エンプティ・チェア(空の椅子)の技法Ⅰ

「エンプティ・チェアの技法」は、
心理療法の世界では、
ゲシュタルト療法といえば、
すぐに、
エンプティ・チェアの技法が、
想起されるほどに、
ゲシュタルト療法の
イメージとなっているものです。

 

また、現在では、

コーチングなどでも、

広く取り入れられたりもしています。

 

しかし、

この技法の持つ本当の意味合い(原理)や、

深遠な可能性が、

あまり理解されていない面も、

あるようですので、

ここでは、

私たちの心理的構造を含めて、

実践法を解説していきたいと思います。

 

そして、この原理面を知ることで、

エンプティ・チェアの技法は、

私たちの予想や想定を、

はるかに超えた領域にまで、

使っていくことができるものになるのです。

 

ところで、
エンプティ・チェアの技法は、

セッションの中の、

さまざまな場面において、
利用でき、

効果を発揮するものとなっています。

一番、多く使用される方法は、
誰か実在の人物を、
エンプティ・チェアに置いてみて、
(居ると仮定して)
その人物に、語りかけ、
伝いたいことを伝えるというものです。
また、相手になってみて、
その気持ちを探ってみるという、形のものです。
この使用の、

原理的な意味合いを、少し見てみましょう。

 


①原理

さて、
心理学、特に精神分析では、

「投影」といえば、

心理的に抑圧したものを、
外部世界(他者)に映し出す、
防衛機制を指しています。

 

そこまで限定しなくとも、

私たちが、一般に、

外部世界をとらえようする時は、

無意識的に、

自分の心的内容(欲求)を、
外部世界に投影して、

物事を把握しようとしているものです。

 

私たちが、ニュートラル(中立的)に、

外部世界をとらえることなど、

無いのです。

 

他者や外部世界が、

ニュートラル(中立的)に

とらえられるようになるのは、

心的投影の歪みが、

ある程度、解決された後での話です。

 

さて、

エンプティ・チェアの技法は、
この投影の原理を、

応用したものになっています。

 

 

②技法と手順

エンプティ・チェア(空の椅子)の技法は、
クライアントの方と、
セッションを進めるなかで、
クライアントの方にとって、
「或る人物との関係性」が、
重要なテーマであると、

感じられた時、
また、
強い感情的な価値(付加)を有していると、
判断された場合に、
まずは、提案される技法のひとつです。

(1)まず、
クライアントの方に、
空いている椅子や座布団の上に、
その人が居ると仮定してもらいます。

(2)次に、
その人に、言いたい事を伝えてもらいます。

さて、
簡単に書きましたが、
「架空の劇」にもかかわらず、
このようなこと自体が、
クライアントの方にとって、
心の負担となる場合もあるので、
慎重なやり取りや、
場の設定が必要なのです。

というのも、この原理は、
上の図のようになっているからです。

 

つまり、
椅子に置く、「その人物」とは、
実は、クライアントの方に存在している、
心的内容(欲求、自我)、
そのものだからです。

仮に「人物A」を置いた場合、
そこに、クライアントの方が見ているのは、
人物Aに投影している、
自分の心的欲求A(自我A)そのものなのです。
(本人は、それに気づかず、

そこに、人物A本人を、

見ていると思っていますが)

そして、この場合、

そこに見た、
人物A=心的欲求Aとの「関係性(非対称性)」において、
今度は、自分をただちに、
心的欲求C(自我C)と同一化します。

自分が、

「自我C」という存在になってしまうのです。


ポイントは、ここです。

心的欲求(自我)AとCとの関係性(=カップリング・非対称性)

のなかで、
自己のアイデンティティが、
規定(拘束)されてしまっているのです。

これが、
普段の日常の、

人間関係のなかでも、
私たちが、
不自由になってしまう理由です。
私たちは、
そこにいる、実在の他人に、

拘束されているのではなく、
他人に投影している、
自分自身の心的欲求の構造(非対称性)に、
拘束されているのです。
(有名な、
トップドッグ(超自我)とアンダードッグ(下位自我)のカップリング、
世間に多い、加害者と被害者のカップリングも、
心の非対称的な構造として、
クライアントの方の心の中に、
元々、存在しているものなのです)

そのため、
無意識にある、
この心的欲求(自我)AとCとの関係性を、
十分に意識化することや、
その硬化した非対称的な構造(葛藤・緊張)を、
変化(流動化)させることが、

まず必要なのです。

そのためには、
この非対称的な拘束のなかで、
緊張している感情を、
解放していくことが必要なのです。
そうしなければ、
十分な自由や、
気づき awarenessの水準を、
得ることもできないのです。

しかし、

それは簡単なことなのです。


やり方(技法)としては、

今同一化している自我状態の、

情動や感情を、

表出しきるということなのです。

 

たとえば、

今同一化している自我Cになった場合は、
そこでの、感情体験を、メッセージを含めて、
十分に、余すところなく、
人物(自我)Aに表出し、表現し、

伝えることなのです。

(希望、願望、恐れ、不安等々も含め)

表現しきることなのです。

それが、自我Cの十全な表現となり、
十全な存在状態を導くのです。

そのことで、

拘束が少し外れだすのです。

 

重要なのは、

「十分に伝えきる」ということなのです。

それは、欲求不満な言えない気持ちを、

完了させるということです。

 

もしも、
ここで、 「自我C」に充分、
同一化できていなく、
そのCがはらむ情動が十分に表現されない場合は、
「自我C」は、
「自我C」ではなく、
「自我C(-A)」のように、
「Aの存在に毀損されたC」の存在に、
とどまってしまうのです。

そうなると、
非対称的な拘束を脱するのに、
不足(毀損)が生じてしまうのです。
ここには、
注意深い観察とアプローチが必要となるのです。

 

 

(3)役割交替

さて、次に、
クライアントの方に、
Cから、Aの椅子(位置)に、
移動してもらいます。

すると、
クライアントの方は、直ちに、
心的内容(自我)Aに同一化します。

この原理は、催眠で言うところの
アンカリング(知覚情報と自我状態の結びつき)です。

 

先ほどのCの役の時に、
Aの椅子に、心的欲求(自我) Aを投影していたので、
Aの椅子に、座った時に、
直ちに、Aに同一化するのです。
 
逆に言うと、Cの時に、
Aの椅子に、心的欲求(自我) Aを、
クライアントの方が、
十分に投影できているかが、

重要なポイントです。
この投影が、十分になされていないと、
椅子を代わったところで、
十分にAに同一化することができないからです。

そして、
この同一化を通して、
クライアントの方は、
それぞれの自我の欲求や情報を、
深いレベルで得ることができるのです。

そのため、
ファシリテーターは、
クライアントの方が、
それぞれの役の時に、
十分に(混じり気なく)、
その心的欲求(自我)に、
同一化できているかを、
きちんと、確認しなければなりません。
もし、そうでない場合は、
別の心的内容(自我)が、
そこに存在している可能性もあるので、
場合により、
「別のアプローチ(そのⅡ) 葛藤解決」を、
導入検討しないといけないかもしれません。

 


(4)役割交替の繰り返し

さて、そして、
この役割の交替を、何度か繰り返します。

すると、
同じ意識(気づき)が、
両方の自我に同一化していくことで、
分断していた、非対称的なAとCの間に、
情報の流通(横断)がつくりだされます。

情報が流れ出し、交流しはじめ、
対称性が生まれだすことになります。

(ここでは、

気づきのメタ(上位)的な位置が、

情報の経路として、

効果を発揮するのです)

役割交替を、
何回も繰り返す必要性は、

各自我への固定的な同一化や、

心的欲求の非対称性とは、
クライアントの方の中で、
信念(ビリーフ)や熏習として、
強く硬化しているので、
弛めるように、動きを与えないと、

情報が自由に流れ出さないからです。

 

なかなか、
それぞれの各自我の深いところ(深部)に、

新しい気づき(意識)を、
行き届かすことが、
できないからです。

役割交替を繰り返すことで、
エネルギーを流動化させて、
拘束性を振りほどくように熔解していくことで、
各自我それ自身(単体)に、
意識が新しい気づきをもって、

同一化をすることが、
できるようになるのです。

そして、
クライアントの方自身が、
心的欲求AとCを、十分に切り分け、
それぞれ同一化・体験できた後にはじめて、
クライアントの方は、
自分が、いままで、
外部世界や人物に投影していた、
心的欲求AとCの姿に、

まざまざと、
気づくことができるのです。

クライアントの方が、
実在するAさんに投影していた、
心的欲求Aの姿を、
自分でも、
アハ体験のように気づき、
驚くことになるのです。
そこで、

幻想や霧が晴れたように、
すっきりした感じを得ます。
そして同時に、
実在するAさんに投影していた、
心的欲求A自体が、
自分自身のパワーであったことに気づき、
それを、我が物とすることができるです。

 


さて、以上が、
エンプティ・チェア(空の椅子)の技法の、
あらましです。

この技法は、

さまざまな活用場面を持っており、
また、その効果も多様なものです。
そのため、ゲシュタルト療法を超えて、
色々な流派でも、

採用されることになったのです。

 

しかし、

この技法のもつ潜在能力は、

それだけに終わるものではないのです。

 

私たちが、

何万年にも渡って実践してきた、

シャーマニズム的伝統の秘密も、

この技法や、

それが生み出す変性意識状態(ASC)の中に、

含まれていたりもしているのです。

 

そのため、

この技法の奥深い意味合いに気づけていくと、

人生を変える重要な技法(魔法)を、

私たちは、

手に入れることにもなるのです。

 

 

 

※実際のセッション(ワーク)は↓

をご参考ください

・セッション(ワーク)の実際

セッションで得られる効果と成果

 

※関連記事

エンプティ・チェア(空の椅子)の技法Ⅱ

葛藤解決の方法(ポイント)

葛藤解決 ネガティブな感情の扱い方

 

※エンプティ・チェアの技法について、

 もっと知りたい方は、専門姉妹サイト

 →「エンプティ・チェア・ワークス」

 

※エンプティ・チェア技法の、

詳細な手順や、応用的な使い方については、

気づきと変性意識の方法論である、拙著↓

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および、

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をご覧下さい。

 

 

↓動画解説 エンプティ・チェアの技法

 

↓動画エンプティ・チェア(空の椅子)の技法Ⅱ 葛藤解決」

 

※エンプティ・チェアの技法を、きちんと効果的に使うと↓

 動画「ゲシュタルト療法と、生きる力の増大」

 

※エンプティ・チェアの応用的な使い方は、コチラ↓

 

※エンプティ・チェアの技法の詳細な解説は、コチラ(第二部)↓

 

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