変性意識状態(ASC)とは 【基礎編】

はじめに

 

人間の持つ広大な潜在能力の開発や、

また、心理療法(ゲシュタルト療法)における、
心理プログラムの改善、治癒作用など、
心の能力や構造を理解するのに際して、
「変性意識状態(ASC)」という、
とても有効な概念があります。

変性意識状態(Altered state of consciousness)とは、
カリフォルニア大学の
心理学者チャールズ・タート博士により、
有名になった意識状態の定義ですが、
通常の、日常意識以外の、
さまざまな意識状態を指した総称です。

日常意識以外の、各種の意識状態、
瞑想状態、催眠状態、トランス状態、
向精神薬物(ドラッグ)による、

サイケデリック(意識拡張)状態、

神秘体験などです。
広くは、体外離脱体験(OBE)、
フロー体験(flow experience)なども、
含まれると考えてもいいかもしれません。

基本的には、良いものでも悪いものでもない、

価値中立的な状態です。

しかし、この変性意識状態(ASC)の扱いに慣れ、
通常の日常意識との間に、
情報的なつながりや、連絡を持てるようになると、
私たちの世界や能力は、
ずっと広がりを持った、

大きなものになっていきます。

人生や世界が、ずっと幅を持った、

豊かなものに変わっています。

 

この人生に、ある意味、

「魔法」が、本当に存在することに、

気づくようにもなるのです、


ところで、かつて、
アメリカの哲学者ウィリアム・ジェイムズは、
著作『宗教的体験の諸相』の、
よく引かれる文章の中で、
以下のように記しました。

「…それは、私たちが合理的意識と呼んでいる意識、
つまり私たちの正常な、目ざめている時の意識というものは、
意識の一特殊型にすぎないのであって、
この意識のまわりをぐるっととりまき、
きわめて薄い膜でそれと隔てられて、
それとまったく違った
潜在的ないろいろな形態の意識がある、
という結論である。
私たちはこのような形態の意識が
存在することに気づかずに生涯を送ることもあろう。
しかし必要な刺激を与えると、
一瞬にしてそういう形態の意識が
まったく完全な姿で現れてくる。
それは恐らくはどこかに、その適用と適応の場をもつ
明確な型の心的状態なのである。
この普通とは別の形の意識を、まったく無視するような
宇宙全体の説明は、終局的なものではありえない。
問題は、そのような意識形態をどうして観察するかである。
―というのは、それは正常意識とは
全然つながりがないからである。
(中略)
いずれにしても、そのような意識形態は
私たちの実在観が性急に結論を出すことを禁ずるのである」
(桝田啓三郎訳『宗教的体験の諸相』岩波書店)

彼自身の変性意識体験より、

導かれた結論のようですが、

変性意識状態について考える際に、
ひとつの参考となる観点です。

以下では、この変性意識状態が、
どのような特徴や構造を持つものなのか、
また、どのように、

私たちの生活の役に立つのかについて、
検討してみたいと思います。


◆心理療法と変性意識状態

まずは、身近な実利的なところで、

心理療法(心理学)における、
その効果(有効性)から考えてみましょう。

心理療法とは、

悩みや苦しみなど、
不調和をきたした心理的プログラムを、
再プログラミング(プログラム修正)することを、
目的としたものです。
ところで、
この再プログラミングをするに際して、
程度の大小はありますが、
日常意識ではない、
この変性意識状態にアクセスすることが、
必要となります。

というのも、
私たちの「日常意識」そのものは、
既存の深層プログラムによって、
作られた表象機能(表象形態)であり、
その日常意識からでは、
当然ながら、
自分自身を生み出している、

基盤的プログラム自体を、
書き換えることはできないからです。


別の経路(迂回したシステム回路)から、
自己の基盤本体に、アクセス介入して、
プログラム修正することが、
必要となるわけだからです。
その際に、
この変性意識状態というものが、
有効に利用されるわけです。

 

催眠療法などを、

イメージすると、

分かりやすいと思われます。

 

催眠療法のアプローチでは、

人間(クライアント)の、

意識面に働きかけるのではなく、

意識面を回避(迂回)して、

直接、潜在意識(無意識)に働きかけることで、

人間(クライアント)の心のプログラムを、

修正しようとするからです。


ところで、変性意識状態(ASC)ですが、

実際のところ、
私たちは、この変性意識状態そのものには、
とても簡単に入れるものなのです。

しかしながら、
その状態において、
自分たちの望むような形で、
任意のプログラム改修(変更)を操作することは、
なかなか簡単には行なえないのです。

それは、人間生体の運営上、
セキュリティの問題(危険)がありますので、
セキュリティ・システムが、
きっちり設けられているからです。
そのため、私たちは、
自分でさえ、簡単(勝手)には、
プログラム修正できないわけなのです。

また、それを行なうには、
セキュリティ・システムをかいくぐる、
ある種の、慎重なスキルや、

心理システムに対する理解が、

必要となってくるわけです。

セッションの中で、
軽度な変性意識状態に移行する、
ゲシュタルト療法(体験的心理療法)は、
そのようなスキルや理解を磨く、
機会となっていくものでもあるのです。

 

 

変性意識状態(ASC)とはⅠ


さて、変性意識には、
色々な状態があります。
しかし、それら自体(単体で)は、
なんら特別なものではありません。

 

私たちの日常意識との対比の中で、
変性意識状態は、
その特異な性格を、

位置づけらけるものなのです。

ところで、

変性意識状態は、
日常意識からの距離によって、
軽いものから、極端なものまで、
多様なスペクトルをもっています。

日常生活の中でも、
私たちの意識は、ふと緩んだ時に、
軽度な変性意識状態に入っていきます。

ちょっとボーとしている時。
何かに没頭している時。
さまざまな機会に、
私たちはするりと、
変性意識の状態に、移行しているのです。

また、
人間関係(関係性、relationship)の中では、
人は、容易に、
無意識の力に惹きこまれて、
軽度な変性意識の状態に移行します。

恋愛や性愛関係、家族関係、
組織内における関係性など、
集合的(集団的)な無意識が、
活性化しやすいところでは、
人は、容易に、
憑依されるように、
変性意識状態に巻き込まれていきます。

意識のフレーム(枠)自体は、

カメラのフレームのように、

(無色透明なものなので)
滑らかに変性意識に移行するので、
変性意識状態に入っていても、
それと気づかれない場合が多いのです。
主観的には、
ふと気づきを得るまで、
私たちは、

ほとんど差異を感じないのです。

そのような変性意識状態に移行する中で、
時により、あまり気づかずに、
私たちは、より冴えた直観力を働かせ、
優れた創造力を発揮したりもしているのです。
また、悪い場合は、
犯罪をおかしたりもしているのです。

のため、気づきawarenessをもって、

変性意識状態を扱えることが、

重要になって来るわけなのです。

また、意図的に、変性意識に入る方法としては、
伝統的には、各種の瞑想技法や儀式的トランス、
向精神薬物の使用などが知られています。

心理療法においては、
セッションの過程の、くつろいだリラックス感や、
内的な感覚集中を通して、
ごく自然に、変性意識状態に入っていきます。
その変性意識状態の中で、
日常意識では、
アクセスできなかった、

深層の情報にアクセスして、
そのプログラムを書き換えていくこととなるのです。

それは、
変性意識状態(ASC)の中においては、
日常意識とは違った形で、
多様なエネルギー、情動、情報の流動性が、
高まって来るからです。
(それに気づくことawarenessができるからです)
そして、
そのような状態(情報空間)の中で、
通常とは違う方法で、
微妙な情報の操作やコントロールが、
可能となって来るのです。

そのため、
意図的に、変性意識状態に入るスキルや、
その中で、エネルギーを方向づけたり、
情報を操作する訓練をしておくことは、
心理療法的な治癒や、
人間の潜在能力・創造力を拡大するためにも、
大変有効なこととなっているのです。

また、逆にいうと、
心理療法のスキルに習熟することは、
これらの能力(意識の拡大、創造力、潜在能力の解放)を、
高めていくことにもなるのです。

そして、この点こそが、
心理療法と、
伝統的なシャーマニズムの、
類似点ともなっているのです。

 

変性意識状態(ASC)とはⅡ

また、変性意識状態には、
さきのジェイムズの文章にあるような、
私たちの日常意識から、
大きく逸脱した、
未知の変性意識状態もあります。

そのイメージは、喩えると、
ラジオのチューニングのようです。
たとえば、
私たちのラジオ(意識)は、
通常AMのNHK放送にチューニングが合っており、
その放送を聞いており、それだけが、
現実(世界)だと思っています。
この例では、NHK放送が、日常意識であり、
その放送内容が、日常現実です。

それが、何かの拍子で、ラジオのツマミが動かされて、
別の放送局(変性意識状態)にチューニングが合い、
別の放送内容(現実)が、聞こえてきたりします。

人類学者カルロス・カスタネダの著作の中に
「集合点」と呼ばれる、
知覚情報を編成するポイント(結節点)が
言及されています。
集合点が動くと、
私たちは、日常的な私たち自身であることを失い、
その現実も溶解し、まったく別物になっていくのです。
カスタネダのいう、集合点が、
厳密に、何を意味しているのかは分かりませんが、
比喩的には、そのイメージは大変示唆的と思われます。

 

体験的心理療法を、

急激に推し進めると、まれに、

そのように、「集合点」 が動いたかのような、

強烈な変性意識体験をすることがあります。

それは、私たちを、

未知の体験領域に、投げ込むことになります。

(心身に混乱をきたすケースもあります)

 

アメリカでは、体験的心理療法も盛んなため、

スタンフォード大学にいた、

精神科医のスタニスラフ・グロフ博士は、

そのような、さまざまな変性意識体験の事例を、

多数研究報告しています。

また、そのプロセスについての、

サポート・システムについても、

多数記し、支援活動を行なっています。

http://hive.ntticc.or.jp/contents/interview/grof

 

そしてまた、

興味深いことのひとつは、

このような変性意識状態の体験自体が、

ある種の深い統合(治癒)効果を、

持っているということなのです。

 

変性意識体験が、

人の深層的プロセスを活性化し、

深い潜在(治癒)能力を賦活し、

人間の心身を、不可逆的に、

変容・刷新してしまうという点なのです。

ブリージング・セラピー事例

 

そのため、

この変性意識状態(ASC)を、

統制的に扱う方法論を組んだり、

使いこなすスキルを磨くことは、

私たちにとって、

益することが大変多い事柄となっているのです。

 

 

限りない未知の体験領域(潜在能力)と、行きて帰りし旅

 

さて、筆者自身、

拙著『砂絵Ⅰ: 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』

の中に、

その体験談を記していますが、

さまざまな取り組みをする中で、

各種の変性意識状態(ASC)の体験を、

数多く持ってきました。

 

そして、

予想もしなかった、

その深遠な体験の様相や、

途方もないエネルギーに、

多くの感銘を、

受けることにもなりました。

 

実際、そのような、

変性意識状態(ASC)が、

私たちにもたらす、

治癒作用、統合作用、

意識拡張作用、変容作用は、

(場合によっては)

たった一回の体験で、

心身や人生を、

一変させてしまうような力を、

持つものでもあるのです。

 

さきに触れた、

グロフ博士は、

多くの人の証言から、

その世界の見え方の変化を、

「あたかも、

白黒テレビから、カラーテレビに、

変わるかのようだ」

と表現しています。

 

実際、筆者自身も、

そのような体験を、

幾度も持つこととなったのです。

 

世界は、

その存在の意味合いや、

眩いきらめきを、

大きく変えてしまうのです。

 

そのことを踏まえると、

変性意識状態(ASC)というものは、

私たちを、深い部分から、

変容させ、刷新する、

自然の秘められた自律的能力であるとも、

おそらくは、いえるのです。

 

そして、

私たちにとって、重要なことは、

そのような、特異な変性意識状態(ASC)と、

普段の日常生活の間に、

きちんとした、意味的な関連づけや、

往還(行き帰り)の道をつくっていく、

ということでもあるのです。

 

そうでないと、

変性意識状態(ASC)は、

単なる奇天烈なエピソードということで、

終わってしまうからです。

 

拙著

『砂絵Ⅰ: 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』

の中では、

そのことを、

「行きて帰りし旅」という言葉で、

公式化しましたが、

そのような取り組みによってこそ、

変性意識状態(ASC)の特異な体験を、

日常生活の中で、

価値ある創造的な出来事に変えることが、

できるのです。

 

そのため、

当スペースでは、

変性意識状態(ASC)に関わるスキルを、

潜在能力を引き出し、

活用するための、

創造的なスキルとして、

実践面・方法論面でも重視し、

クライアントの方に、

これらを学んでいただいているのです。

 

セッションにおいても、

クライアントの方が、

それら変性意識状態(ASC)の秘められた力を、

ご自分で活かせるようになることを意識して、

各種取り組みを進めているのです。

 

そのことが、

長い目で見た場合に、

最終的に、

クライアントの方が、

ご自身で、変容する力や、

創造力を高めていかれるに際して、

決定的に重要な方法論になると、
考えているからでもあるのです。

 

 

※変性意識状態(ASC)への入り方など、

 その詳細な概要と実践技法は、

入門ガイド↓

『気づきと変性意識の技法:流れる虹のマインドフルネス』

をご覧下さい。

また、

変性意識状態の、広大な世界を知りたい方は、

多様な体験事例も含んだ、

より総合的な↓

『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』

をご覧下さい。

 

 

フロー体験について

「至高体験」の効能と、自己実現

アイデンティティの極致としての至高体験
「完全なる体験」の因子と、マズロー
気づきawarenessと自己想起self-remembering

自己想起self-rememberingの効能

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変性意識の治癒効果

 

 

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※変性意識状態(ASC)の活用に特化したサイト、

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↓動画「変性意識状態(ASC)とは」

 

↓変性意識状態への入り方はコチラ

 動画「気づきと変性意識の技法:流れる虹のマインドフルネス」 

 

↓より多様で、深遠な変性意識状態については、コチラ

 動画「ゲシュタルト療法 変性意識状態 エクスタシィ(意識拡張)」

 

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